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#みんなおんなじ空の下【ブログ】「応援!」積み重なるリスクに直面するフィリピンの人々

新型コロナウイルス感染症は貧困状態にある人を更なる困窮に追い込みました。フィリピンでは突然のロックダウンにより蓄えのない人は収入源を断たれ、毎日ギリギリの生活を送っています。今回は、フィリピンで子どもへの教育支援や女性への生計支援を行っている認定NPO法人アクセス常務理事の森脇祐一さんにフィリピンの構造的な貧困が新型コロナウイルス感染症の流行によってどのように立ち現れてきたのかを伺いました。


目次
①突然のロックダウン
②浮き出る構造的貧困
③低所得者に届かない医療
④つながりを通して心を通わせる


①突然のロックダウン

写真提供:認定NPO法人アクセス


「フィリピンのロックダウンは本当に突然でした。宣言されてから強制力が発生するまでに数時間の猶予しかなかったのです。3月16日の夜に、17日からロックダウンを実施するという発表がされたとき、既に勤務を終えていたアクセスの現地スタッフは翌日も事務所に行ってロックダウンに対応するための準備をする予定だった。」と森脇さんが語りました。ところが、17日の午前0時にはマニラ首都圏があるルソン島全域にわたり効力が発生。一家族につき一人が生活必需品を調達する以外には、外出が厳しく禁じられました。

このロックダウンの衝撃を真正面から受けたのは、「貧困層」にあたる人々です。アクセスが事業を行うマニラ市北西部のトンド地区には、アジアで最大規模といわれる都市スラムが広がっています。そこで暮らす人々の大半ゴミ捨て場やレストランを回って換金できるゴミを集め、回収業者に買ってもらうスカベンジャーの人、港湾の日雇い労働者、鍋に入れた料理を屋台で並べて売る人、交差点の物売り、富裕層の洗濯を行う人など多くの人が外出禁止によって仕事を失いました。移動制限のための抑止力の意味合いが強いとは思われるものの、警察だけでなく軍隊も配置され「過度な外出がある場合には射殺もやむを得ない」といった発表もされており、日々、ギリギリの生活の中なんとかやり繰りに努めてきた人たちの現金収入は途絶え、貯蓄もない中で親戚や消費者金融から借金をして本当にギリギリ食いつないでいる状態です。


②浮き出る構造的貧困
写真提供:認定NPO法人アクセス

この窮状の背景には構造的な問題が潜んでいます。フィリピンの農村部で植民地時代から続く大土地所有制とプランテーション農業のもと小作人や農業労働者は地主や多国籍企業に搾取され続けています。フィリピンの農地や土地なし農民は、日本などの先進国に原材料や食糧などを安く供給するために利用されてきました。農村で食べていけない人たちは都市部に安定した働き口を求めて移住する人が後を絶ちません。しかし、都市部でも先進国企業との市場競争にさらされ、産業間の国内ネットワークが十分発展しておらず、安定した職と収入を手にすることができる人数は限られており、農村から流入してくる労働力を吸収しきれず、不安定な仕事に従事せざるを得ません。これらの問題を背景としてフィリピンでは長期にわたり先進国からの搾取と支配による構造的な貧困が作り出されてきました。


③低所得者に届かない医療

写真提供:認定NPO法人アクセス

フィリピンの私立病院はアメリカで研鑽を積んだ医師も多く、世界的にみても高水準の医療サービスを提供しています。ただし、そこで治療を受けられるのはごく一部の富裕層のみ。国民の3割から4割を占める低所得者層の人々はこれらの高度な医療にアクセスすることができません。

フィリピンの公的医療保険は、フィルヘルスと言い、国民の91%が加入しているといわれています。ただし、保険に加入していたとしても一定の前払い金を払ってから受診することが求められるため貯蓄に余裕がなければ診察・治療を受けることができません。また、入院費の場合40%しかカバーされないなど、自己負担率も高くなっています。新型コロナウイルス感染症に感染した場合、入院をして治療を受けることが必要になり高額の医療費が発生します。医療設備の整った病院は入院するだけで10.2万ペソ(約20万円)がかかるのに対し、スカベンジャーの人が1日働いて得られる収入は200ペソ(約430円)程度です。その収入は日々の生活に充てられるため、貯蓄に回すことは出来ません。たとえ保険で費用が一部カバーされたとしても、入院治療を受けると数十万ペソの自己負担が発生するため、貧しい人たちは治療を受けることができない現状があります。
このように医療へのアクセスが確立されていない状態で、都市スラムの人々の暮らしは新型コロナウイルス感染症に対して大きなリスクを抱えています。ある川沿いのスラム地区では、南北2300mに渡ってトタンやベニヤ板で増改築した2、3階建の家がぎっしりと立ち並び、各階に別々の家族が密集して暮らしています。感染者が出た場合に瞬く間に広まってしまう状況であるといえます。

さらにこの状況に追い討ちをかけるようにして、4月18日にトンド地区で大きな火災が発生しました。約1000世帯4115人が焼け出され、三密状態の避難所で生活することを余儀なくされています。


④つながりを通して心を通わせる

写真提供:認定NPO法人アクセス

アクセスは現在、新型コロナウイルスの感染が拡大する以前より取り組んでいた、フィリピン各地での教育支援プログラムの対象者236家族に緊急支援を行なっています。現地で養豚を営む人々から購入した200ペソ分(日本円で約430円)の豚肉、そして300ペソ(日本円で約640円)の支給をこれまでに二度していますが、「それでも支給対象家族、支給額が限られてしまうのがもどかしい」と森脇さんは言います。一部の地域では家父長制がいまだに色濃く残っているところもあり、支給された現金の使い道は父親が決め、場合によっては父親のためだけに使用され家族全員のために使用されないケースもありえるため本来は、クーポンや、食糧を支給するのが良いのですが、ロックダウン下でスタッフの外出にも制限があるため実現が難しい状況にあります。

そんな中、緊急支援を受けている家庭で家事を担っている方達から、「お金や豚肉をもらうことは勿論ありがたいけれど、それ以上に支えてくれる人たちとのつながりに励まされています。もう少し頑張ろうと思えます。」と笑顔が見られ、心が通いとても嬉しかったと現地スタッフから報告を受けたそうです。

本基金は、日本各地域、世界各地域で同じ課題を抱える人々を繋ぎ、同時に支えることを目的としています。いただいたご寄付や、応援は、支援活動を行っているNGO/NPOを支えると同時に彼ら、彼女らへの応援にもなります。

遠く離れていても、そこが誰かの大切な地域であることに変わりはありません。私たちは「みんなおんなじ空の下」で生きています。今こそ互いに助け合い、みんなでこの危機を乗り越えたい、そんな私たちの想いに少しでも共感していただけたら、ぜひ皆様のお力をお貸しください。

私と地域と世界のファンド:みんなおんなじ空のウェブサイトはこちらから!↓
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