欧州の国々では移動規制が緩和され、日本では非常事態宣言が解除されました。しかし新型コロナウイルス感染症の脅威が去ったわけではありません。世界には依然として厳しいロックダウン下で明日の食べ物に困り、感染のリスクに晒されている人々がいます。今回は、41年間にわたってアジア各地で安全な水の供給事業を中心に貧困の連鎖を断ち切るための活動をされている公益社団法人アジア協会アジア友の会(以下、JAFS)の熱田典子さんにインドやネパールで起きていることについてお話を伺いました。
多くのアジアの地域では脆弱な医療体制への懸念から、WHOの指示に従う形で早々にロックダウンが決断、実行されました。「まずは感染拡大を防止することが最優先とされ、ロックダウン後の人々の生活を十分に保障する体制はとられなかった」と熱田さんは言います。保障が行き渡らないまま強制的に外出が禁止されたことで大勢の人が仕事を続けることが困難になり、人々の生活は厳しい状況へと追い込まれました。
農村部では村の中での移動は許容されていますが、都市部では国家警察が見回りを行ない、市民が仕事をしようと屋外に出ると家に帰るように勧告されます。そして比較的移動が可能である農村部でも現在は南アジアは雨季前で食料がもっとも少ない時期であるため、生活は厳しくなっています。6月末からは雨が降り出しますが、作物が実るのは早くても8月であり、しばらくは自給自足をすることができません。収入がまったくない状態のため、借金を返済することもできず、支援のために行われていたマイクロクレジットがむしろ人々の負担になってしまっています。
また、インド西部に位置するマハラシュトラ州では、少数民族の人々が森で採集などを行う伝統的な暮らしを営んでいます。しかし近年、環境汚染や気候変動の影響によって森での収穫が減り、近隣の農村で日雇い労働をして現金収入を得ることでなんとか生計を立てていました。しかしロックダウンによって日雇いに出ることができなくなり、現金収入は途絶えました。独自の宗教を持ち伝統的な生活を続ける人々は、資本主義に基づく産業化を推進する政府の保障からこぼれ落ち、支援の対象に入っていないそうです。日々の食料を賄うことも難しく、JAFSは現地の提携団体の要請を受けて食糧支援を行なっています。
②終わらない感染の危機
写真提供:公益社団法人アジア協会アジア友の会
(ネパール 手を洗う場所が十分になく野外に手洗い場が設置されている)
日本では非常事態宣言が解除され収束ムードも少し漂っていますが、ネパールやインドは予断を許さない状況であり、むしろこれからさらに状況は悪化する可能性が高いと熱田さんは話します。
その理由の一つは国外で感染している国民の多さです。ネパールでは、国内で感染している人よりも国外で感染している人の方がはるかに多いそうです。国外に出稼ぎに行ったり留学に行ったりしている人々は経済的に余裕がないため、狭い部屋で共同生活を送っています。この状況での三密の回避はほぼ不可能であり、一人が感染すれば瞬く間に感染が広がってしまいます。国境沿いには帰国を希望する人が集まり、国境周辺での感染拡大が起こっています。
感染者が増加した場合の医療体制は極めて脆弱です。熱田さんによると、ネパールではすでに医療崩壊が起こっており、入院した場合の死亡率が高くなってきています。JAFSは現地の要請を受けてストレッチャーや救急車の提供を行なっていますが、感染者が出ても隔離して治療を受けられるような場所は限られます。特に農村部では、医療機器の不足などもあり、離れた場所に寝かせて点滴をするぐらいしか出来ることはなく、回復は患者本人の体力にかかってきてしまいます。
③未来への不安
写真提供:公益社団法人アジア協会アジア友の会
(インド 農村部で日雇いに行けず賃金がストップしてしまった人々への食糧支援)
熱田さんは現状を危惧するだけでなく、新型コロナウイルス感染症収束後についても不安を抱いていると言います。JAFSの活動は子どもや女性が担わされてきた水汲みの重労働を井戸や水パイプラインの供給によってなくし、子どもには教育支援、女性には生活自立支援を行うことで貧困の連鎖を解消することを目指してきました。アジア各地域では、正規雇用は難しくても職につける人が増えはじめ、初等教育を受ける子どもたちの比率も上がってきていました。
そんな矢先に起こったのが新型コロナウイルス感染症の流行です。せっかく仕事を得た人が職を失い、学校も閉鎖されました。JAFSは郊外でのインフラストラクチャー整備事業を中断せずに進めていますが、普段併せて行なっている現地住民に事業や教育への理解を得るためのセミナーは開催できずにいます。今後、家庭の経済的理由から教育を受けられない子どもたちが増えることで、解消されつつあった貧困の連鎖が再び始まってしまうのではないか。暗い未来が予想されます。
④希望の光を届ける
写真提供:公益社団法人アジア協会アジア友の会
(インド 少数民族の地域に消毒成分のある石鹸を配布し、使用の必要性を伝える)
6月18日現在、日本での新型コロナウイルス感染症拡大は予断を許さないものの、新しい日常に向けて、少しずつ前に進み安堵している方も多いと思います。一方で、開発途上国では、現在も感染症拡大による医療崩壊が起き、さらに状況が悪化していくであろう地域がたくさんあります。政府からの保障が十分でない上に、インドやネパールではそもそも戸籍のない方、アウトカーストという差別的身分制度の名残によって保障対象から外されてしまう方達がたくさんいます。
熱田さんは「みなさんが、参加し、関わってくださることによって、直接顔を合わせない人達、心にぽかんと絶望しかない状況にある人達に希望を与えることができます!」と力強く語りました。
絶望的とも思える状況下にある方達のために私たちにできることは何でしょうか。日本にも、世界にも今まさに困難な状況で絶望の淵にある方達がたくさんいる中で、私たちにできるのは彼ら彼女らへ思いを寄せ、自身にできることを考え抜くことです。たとえば、ひとり一人が3000円を持ち寄り5000名が支えれば大きな力となり、確実に今の困窮している状態へ良い変化をもたらすことができます。「私と地域と世界のファンド#みんなおんなじ空の下」は、この活動に参加することが「誰一人取り残さない」SDGsの実践例のひとつです。多くの市民のみなさんの参加をよろしくお願いします!!
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