KANSAI-SDGsの活動を韓国で報告しました
9月30日から10月2日にかけて韓国光州広域市にてWorld Human Rights Cities Forum 2019(世界人権都市フォーラム)が開催され、K-SDGs運営委員メンバーである岩崎裕保(関西NGO協議会・開発教育協会監事)と岩根あずさ(関西NGO協議会職員)が参加しました。世界人権都市とは、持続可能なコミュニティの発展のために、そこに住む人が人権の枠組みを学び理解する必要があるという考えのもと、1977年に始まったコンセプトです。世界人権都市フォーラムはこのコンセプトを基礎として2011年から開催している世界会議です。
フォーラムでは、世界各国からの参加者が、自分たちの暮らす街での人権、人権教育の状況などを報告しあうとともに、より人権が尊重された社会を作るにはどのような働きかけが必要なのかが話し合われました。フォーラムは50カ国以上から2000人以上が参加する大規模なものでした。40以上のプログラムを通して人権と都市、SDGsがキーワードとして何度も登場しました。3日間を通して、午後のセッションには授業が終わった地元の高校生も多く参加するなど非常に開かれたフォーラムで多くの人が参加し、意見交換、情報共有を行う場となっていました。
KANSAI-SDGsの活動報告
今回のフォーラムではKANSAI-SDGsでこれまで市民の皆さんと丁寧に議論してきた内容を、世界の市民社会のメンバーに報告しました。報告は10月2日の午前から開催されたInternational Workshop on 2030 Agenda2というセッションで行われました。このセッションはTEDトークの形式をとって行われ、20人以上の参加者がそれぞれが活動する地域の様子や、活動と人権がどのように結びつきどのような成果を生んでいるのかを報告しました。
報告者の岩崎からKANSAI-SDGsの取り組みが始まった背景や、地域社会でSDGsを議論し、実践していく必要性について説明がありました。また、KANSAI-SDGsの分科会を通してこれまで異なるフィールドの課題だと考えられていたものが、実は密接につながっていることが参加者の中で意識されるようになったことや、活動を通して市民が社会の変革を担うことが意識されるようになっていることなどを報告しました。そして、今後の活動では周縁に置かれている人たちの声を含めてアジェンダ作りをしていく必要性などへも言及がありました。発表の中ではSDGsは人権と非常に密接に関わる目標であり、私たちが豊かで安心、安全に暮らすことができる社会の基盤を作るための要素がSDGsの中には盛り込まれていることが伝えられました。
KANSAI-SDGs市民アジェンダ作りでは、「誰一人取り残さない」というスローガンを実行していくためにも、私たちが暮らすコミュニティでSDGsをどのように達成していくかを考えることを大切にしてきています。日々の暮らしの中で感じる生きにくさや、しんどさを声にすることができること、そして誰かが声をあげたときに一緒に受け止めようとし、状況を改善するにはどうしたらいいのか、一緒に考えていくことができる場をKANSAI-SDGsの活動を通して作っていきたいと考えています。
KANSAI-SDGsと人権都市のつながり
今回のフォーラムで様々なセッションを通して、「都市と人権」という視点とSDGsの共通点を見ることができました。「誰一人取り残さない」社会の基盤を作っていくために、どのように市民社会が働きかけることができるのかというKANSAI-SDGsの活動がこれまで大切にしてきた部分についても、フォーラムの参加者との意見交換をしました。
たとえば、マレーシアからの参加者からは、貧困の状況にあったり、差別を受けているコミュニティの人々と対話を重ねることで、その人たちが今一番望んでいる解決策は何か、その解決策を実現させるためには、当事者たちがどのように政策立案者や社会に訴えることが有効な方法なのかを模索しているという発表がありました。その後の意見交換を通じて、しんどい状況に置かれている人が自身の声と言葉で表現する大切さを改めて確認することができました。
また、ひとつの分科会のラウンドテーブルでは「人権都市」を掲げると大きなテーマなうえ、市民にとっては漠然としたコンセプトになってしまうことを例に挙げ、「グリーンな都市」、「安心な都市」、「正義のある都市」などの言葉を使いながら人権都市を様々な角度から捉えなおしてみてみることによって人権や人権都市といったコンセプトに関しての理解が進むのではないか、という意見もありました。
これからのKANSAI-SDGsの活動に向けて
今回のフォーラムでは、低所得国からの参加者から自身の暮らす国、地域の貧困や不平等、格差といった課題に対してSDGsをどのように用いて活動を行っているかや、今後どのようにより貧困や格差が加速していく社会に向けたアプローチができるのかなど、異なる分科会の中で繰り返し議論が行われました。
これまでKANSAI-SDGs市民アジェンダでは地域に目を向けた議論を行ってきました。一方で、SDGsは国際的な不平等や格差、貧困なしに語ることはできません。私たちの足元にある課題に目を向けながら、これまで以上に国際社会の課題とのつながりを意識することもSDGsの達成を目指した活動には必要になってきます。地域社会、日本社会、国際社会、それぞれの課題を見つめながら、KANSAI-SDGs市民アジェンダ作りの活動では皆さんと一緒に、皆さんが思い描く2030年の社会に向けた歩みを進めていきたいと思います。
(報告者:岩根あずさ)