(財)PHD協会 坂西卓郎さん

(財)PHD協会 坂西卓郎さん

加盟団体スタッフインタビュー企画第3回目は、財団法人PHD協会 (以下、PHD協会)の事務所にお邪魔して、スタッフの坂西卓郎さんにお話をお伺いしました。

PHD協会は、モノ、カネ中心の一時的援助を超えた草の根レベルの人材交流・育成を提唱し、1981年に設立された団体です。 アジア・南太平洋地域からの研修生を招き、研修後のフォローアップを通して、草の根の人々による自立した村づくりと生活向上に協力する活動をしています。 また、日本の人々にもアジア、南太平洋地域の人々との交流を通して学び、そこから毎日の生活を問い直し、 平和(Peace)と健康(Health)を担う人材を育成(Human Development)し、「共に生きる」社会を目指しています。

今回は、PHD協会の活動内容、ボランティア・スタディツアーのことなどを中心に詳しくお話を伺いました。

モノ・カネの援助ではなく、人づくりでの協力

PHD協会が一番力を入れている活動は何ですか?

―PHD協会の中心的な活動は、アジア・南太平洋地域からの研修生を日本に招いての研修です。
2010年度は、ネパールから2名、インドネシアから1名の研修生を迎えています。 この研修制度は設立当時から変わらず、物や金による援助ではなく、人づくりでサポートすることを目標としている活動です。 研修生たちは、日本で有機農業や保健衛生を学び、その経験を自分達の村に持ち帰り、村の人々と共に村づくりに励みます。 実際に村づくりをするのは私たちではなく村の人たちなので、この事業を通して村づくりをする人を育てること目指しています。

研修生はどのような手順を経て決定されるのですか?

―次年度の研修生を決めるために、夏に日本人スタッフが現地に行って、選考を行います。 元研修生からの告知や紹介で応募してくれる人も多いです。 研修生を招いたことのある地域では、元研修生が適切だと思う人に声をかけたり、選考までも担ってくれています。 研修では、研修生が村に帰って村づくりをすることを目的としているので、 たとえどんなに優秀な人でも、他の人々と協力して村づくりができる人でなければ、研修生になっても意味がありません。
元研修生がいる村の場合、我々がするのは研修生候補者が、村のためにやりたいという意思があるかの確認が主です。 村でどのように活動しているのか、どのような評判なのか、帰国後村で活動をがんばることができるのは誰かなどの要素は、元研修生の情報をもとに一緒に考えます。 外部者である私たちがすべてを決めるのではなく、研修生と一緒に決めるのが最大の特徴ですね。

研修プログラムで気をつけていることは何でしょうか?

―自分たちの村に持ち帰れる学びをしてほしいということです。
例えば機械が村で使えないのは当たり前ですが、それ以外にも村では生かせないこともあります。 農業だと土や植生、生活の違い、保健衛生であれば、環境や制度、文化の違いで日本の知恵をそのまま活かせないことも多いです。 ですので、有機農業であれば土作りなどの基礎をしっかりと学び、応用はそれぞれの研修生の創意工夫に任せています。
また、ないもの探しをさせないということに気をつけて研修をおこなっています。 例えば水道ひとつとっても研修生には「家の中でいくらでも水がでるなんて」と驚きなのですが、 そういったないものだけに目を向けるのではなく、それぞれの地域あるモノ、知恵や文化や風習などからも学ぶことを大事にしています。 日本での学びから、自分たちの経験をふり返るということをしてほしいと思っています。

研修に携わる醍醐味はなんでしょうか?

―研修生の意見や、一年間の変化を間近で見る事ができるという点が醍醐味です。 そういった意味で、自分が一番贅沢なポジションにいるなと感じます。 このようなことを、一人でも多くの日本の人に経験してほしいので、今後そのような機会がもてるようにできたらと思っています。

事務所でのふりかえりの様子。村で活かせることとは?

事務所でのふりかえりの様子。村で活かせることとは?

2010年度研修生のひとり、ミンクマリさんの行動範囲地図。村での生活の実際を聞いてきます

2010年度研修生のひとり、ミンクマリさんの行動範囲地図。村での生活の実際を聞いてきます

ひとりひとりに合った関わり方ができるボランティア・スタディツアー

農業に関する知識がない人でもボランティアに関わる事ができますか?

―PHD協会には、多くのボランティアがあります。事務所にて、使用済み切手の整理などをしていただいたりしています。 特に、こちらは年配の方が多いです。 個人的におすすめなのが、日本語ボランティアです。 研修生は研修期間中に、YMCAにて日本語を学ぶのですが、その授業の後に復習をお手伝いしたりするものです。 研修生と直接関わることができるので、人気があります。フェアトレードのグループもあり、それぞれのやりたいことが見つかると思います。 継続的に活動していただいているボランティアの方は10~20名くらいで、一番長い方で30年近く関わってくださっている人もいます。 気楽にできるところや出会いがあるところが魅力なのかもしれません。

スタディツアーの参加者の年齢層を教えてください。

―これは本当に幅広いです!PHD協会のことを長く支援してくださっている人で、村の元研修生に会いに行きたいという人もいます。 ツアーによって参加者の特徴が違うのですが、村に行って、のんびりしたいというような人が多いツアーもあります。
いくつかのスタディツアーの中でも、 元研修生が多いインドネシアの村では、 彼らが日本語を話せるので、 特に言語の心配なく村の事について詳しく知ることができます。

坂西さんのこれまでの活動と、これからの展望

坂西さんが今後の活動で力を入れていきたいと思っていらっしゃることは何でしょうか。

― 私が、 個人的に力を入れたいと思っていることは2つあります。
ひとつ目が、研修生の学びの場に、より多くの日本人に参加してもらうこと。 もうひとつが、地元学というものをおこなって、村の人が自分の村の良いところを発見し、それを村の人々に広げて行ってもらうことです。
ひとつ目に関して、研修生は、農業・保健衛生などの専門分野の研修と日本の水俣などの事例から豊かさや村づくりの方向などを一緒に考えるような研修を経験します。 そこに、今後は研修生のみならず日本人が参加する機会を増やしたいです。 例えば、農業研修に同行してもらうことや、水俣や釜が崎の事例などを研修生がどのように見るかに触れることで、我々も学ぶことが多いと思います。
ふたつ目の地元学に関しては、参加型の地域づくりの手法の一つと考えてください。「ないものねだりではなく、あるもの探しをしましょう」というのが地元学の考え方です。 外部者の視点と村の経験、知識から村のあるものを探し、そのことから村の人自身が村にあるもの、村の良さに気付き、誇りをもってもらうことができるような活動を考えています。

坂西さんご自身が現在のお仕事をすることになったきっかけについて教えてください。

―高校生の時に、神戸で阪神・淡路大震災に被災しました。その時に、ボランティアを始めて経験し、地域の人たちと協力していろんなことをするのが楽しく感じました。 それをきっかけに、ボランティアなどに興味を持ち、PHD協会に関わるようになったのは、 フェアトレード団体での活動にスタッフとして悩みを感じていた時にPHD協会の国内研修生として研修に携わったことが始まりです。
後に水俣に移り住みました。研修生と「物質的な豊かさの弊害」という今まで語り合いたかったけど、語り合えなかったテーマを水俣をきっかけ語り合うことができました。 今まで感じていた壁を乗り越えるきっかけがあると感じ、水俣のことをもっと勉強したいと思ったのがきっかけです。 そして、水俣で毎年研修生の受入をしていたのですが、次第に水俣だけでなく、もっと深く研修生と関わってみたいと感じ、今に至ります。

最後に、インタビューを読んでくださった方にメッセージをお願いします。

―研修生は その存在が学びの宝庫なので、ぜひ研修生に会いにきてください。 アジアンDAYといって、アジア諸国の服装を着て一日を過ごしてみようという日もあります。 その機会にアジアの服を着て、事務所にお越しください。

インタビューの様子

インタビューの様子

事務所入り口近くには、フェアトレード雑貨

事務所入り口近くには、フェアトレード雑貨

<インタビュー後記>

―ないものねだりではなく、あるもの探しをするという坂西さんの言葉が印象的でした。 研修生のみならず、このことは私たちの日常生活にも当てはまると思います。 自分と他の人を比べたりして、自分にないものをうらやましがったり、求めたりすることがあります。 しかし見方を変えて、自分の特徴や良さはなにかを見つけることができると、そこに自信が持てるし、自分のよさを活かして生活していくことができると感じました。 自分のよさ、日本の良さに気づくには、他者との交流・日本国外からの視点などが必要不可欠だと思います。 団体設立から一貫して、モノやカネによる援助ではなく、人づくりに力を入れてきたPHD協会の活動は、 海外に対する人づくりのみならず、私たち日本人が自分のことを考えるきっかけも提供してくれると感じます。 PHD協会のボランティアやスタディツアーなどに参加して、研修生の国や村のことだけでなく、自分のこと・日本のことも考えてみましょう。

(インターン 阪本恵里子)

PHD協会が主催するイベントやスタディツアー、ボランティア募集の情報は、関西NGO協議会ウェブサイトでもご覧いただけます!

(財)PHD協会ウェブサイト:http://www.phd-kobe.org/

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