(特活) 開発教育協会(DEAR) 岩﨑裕保さん

(特活) 開発教育協会(DEAR) 岩﨑裕保さん

インタビュー企画第二回は、特定非営利活動法人開発教育協会(以下、DEAR)の代表理事であり、帝塚山学院大学教授の岩﨑裕保さんにお話をお伺いしました。

DEARは、「開発教育」を推進するためのネットワークNGOとして、様々な立場の人たちが一緒に「学びの場」作りに参加し、 “世界”と“学びの場”をつないでいくことを目標に活動を行っている団体です。

※開発教育とは、私たちひとりひとりが、開発をめぐるさまざまな問題を理解し、望ましい開発のあり方を考え、共に生きることのできる公正な地球社会づくりに参加することをねらいとした教育活動のことです。

(DEARウェブサイトhttp://www.dear.or.jp/より)

DEARの設立とこれまでの歩み

―はじめにDEARが設立されたきっかけをお聞かせください。

開発教育は、1960年代に南の開発途上国でのボランティア活動に出かけていた欧米の青年たちの声がきっかけとなって始められました。
その後、欧米から10年ほど遅れて日本に紹介されるようになり、1970年代後半あたりから国連の広報センターなどが、東京・大阪・名古屋各地で開発教育シンポジウムを行っていました。
その流れを受けて、1982年に開発教育協議会(現在のDEAR)が設立されました。設立当初には、日本YMCA同盟にずいぶんお世話になりました。
DEARは2012年に設立30周年を迎えます。DEARの設立に参加した当時30歳くらいの「若者」が、現在は理事などとしてDEARの運営に関わっています。

―DEARの活動に参加している方は、教育に携わっている方が多いのでしょうか。

現在は、教員の割合が高いですね。1980年代の半ばから1990年代の半ばにはNGOや国際交流協会の職員、外務省など政府機関の職員なども多数活動に参加していました。
最近では、大学教員の会員数も増加傾向にあり、やっと大学にも開発教育が広まってきたという実感があります。

学んだ事を行動につなげていくことの大切さ

―今まで多くの開発教育の教材を発行されていらっしゃいますが、使用した方からの反応が大きかったものはどの教材でしょうか。

ワークショップ版 世界がもし100人の村だったら』の販売数が一番多く、今も継続して人気のある教材です。
全世界の人口を100人に縮め、実際に体を使って世界の格差や多様性を実感できるような教材です。また、『貿易ゲーム』も人気で、 この教材を通して世の中に存在する格差を体感してもらうことができます。
最新の教材『写真で学ぼう!「地球の食卓」学習プラン10』シリーズは、世界24カ国30家族を訪問し、 それぞれの家族と1週間分の食料をならべて撮影した写真集、授業案、フードマイレージに関する教材という3部構成になっています。 この教材は食べ物をあつかっているので、小学生にも取り掛かりやすいと思います。
教材を通しての学びで終わるのではなく、そこから何か行動を起こすことにつながるようになればよいと思っています。

―岩﨑さんご自身が開発教育に携わり始めたきっかけを教えてください。

高校教員をしていたころ、UNESCO部の顧問をしながら、国際理解教育に取り組んでいました。 しかし、国際理解教育の理解という言葉に表れている通り、世界のことを「理解」すればよいという考えだけでは物足りなく感じていました。 そのようななか、大阪で開催された「開発教育シンポジウム」に参加し、開発教育がより踏み込んだことを目的にしているということを感じたのがきっかけです。
その後、当時の開発教育の先駆者のお話を聞くにつれてやはり面白いと思いました。
開発教育は、知識や技能を獲得するだけでなく、態度を養成していこう、アクションにつないでいこうという姿勢が強いと思います。 学んだことを行動につないでいくということが、もっと評価されないといけないだろうと感じて、少しずつ開発教育に力を入れるようになりました。

日本の開発教育の課題とこれから:足元の問題から考える

―現在の日本の開発教育の課題を踏まえて、今後必要なことは何だとお考えですか。

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インタビューの様子

インタビューの様子

これまで、開発教育では外国のことを、日本と比べながら扱うことが多かったため、教える側にとっては、授業が比較的おこないやすかったのです。
しかし、自分達の身近な開発の問題を問わないでよいのだろうかと感じるようになりました。足元の課題にもっと目を向けて行く必要があるという想いから、 関西地域で開発教育に携わるメンバー(関西セミナーハウスで1989年からおこなっている開発教育研究会)で 『身近なことから世界と私を考える授業-100円ショップ・コンビニ・牛肉・野宿問題』を作りました。
構造的に日本は、食糧やエネルギーを外国に頼っており、とても微妙な立場にあります。 そのことに気がつかないまま、平和な日本という印象を持って子どもたちが育っていき、 世界には貧しい人達がいて、お金を出してあげれば何とかなるという考えを持ってしまうのは、ある意味一番よくないのではないと思っています。 この教材でとりあげているのは日本で身近な100円ショップやコンビニです。 われわれの足元の問題を改善する事が、結果的に国際関係もよくすることにつながるのではないかと考えています。

―最後にDEARを一言で表してください。

DEARは『とてもいい人の集まり』であると思います。ここでの「いい」というのは、さまざまな意味を含んでいます。スタッフの人柄や能力をはじめ、創造的で積極的な人がつどっています。
DEARには大阪事務所もあって、関西地域でも開発教育に関してのプログラムやセミナー、教材体験なども多数おこなっていますので、開発教育に興味がある方は是非活動に参加してください。

<インタビュー後記>

長年、開発教育に携わってきた岩﨑先生のお話から、日本で開発教育が発展してきた経緯や当時の状況を詳しく知ることができました。 開発問題を考える際、海外の格差や貧困などに目を向けがちですが、足元をみると日本にも真剣に取り組んでいくべき課題が多数あります。 岩﨑先生のお話の中でも特に自分達の課題に目を向け取り組んでいくことが、国際関係にもつながっていくというお話が印象的でした。 学びを行動につないでいくという開発教育の考えかたは、開発教育の分野だけでなく、私たちの日常生活でも重要な概念だと感じました。
インタビューの中でご紹介いただいたDEARの教材やイベントにご興味がある方は、DEARのウェブサイト(http://www.dear.or.jp/)をご覧ください。 また、関西NGO協議会のNGO情報コーナーにも、DEARの教材がありますので、是非お立ち寄りください。

(インターン 阪本恵里子)

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